メインフレーム上のデータをクラウドへ!IBM Cloud Tape Connector for z/OS って一体何?

Amazon S3,z/OS

こんにちは、システム基盤サービス部の伊藤です。

「クラウドサービス」という言葉は今や当たり前のように耳にします。当ブログでも、AWSに関する記事をいくつか掲載していますが、メインフレーム技術者の私にとっては正直縁の遠い存在に感じていました。

しかしながら、「レガシー」と表現されることが多いメインフレームの世界でもデータをクラウドストレージに転送するための機能・製品が登場していることをご存じでしょうか。比較的新しい技術であり、社内でも実績は少ないですが、最近は物理テープでのバックアップ運用方式の代替手段として検討しておられるお客様もいらっしゃるようです。

今回はその中でも「IBM Cloud Tape Connector for z/OS」という製品を経験できる機会がありましたので、この場を借りてご紹介したいと思います。

「どんな製品なんだろう?」「メインフレームのクラウドへのデータ転送ってどんな感じに行われるの?」 と気になる人の参考になれば幸いです。

IBM Cloud Tape Connector for z/OSとは

メインフレーム上にある順次データをクラウドストレージへ転送するIBM製品です。z/OS上で稼働させることで、従来のテープまたはディスクストレージ上へ書き込まれるバックアップデータを自動で認識・転送してくれます。

もちろん、クラウドストレージ上からローカル環境のストレージへデータをリストアすることも可能です。

IBM Cloud Tape Connector for z/OSでは、下記のような代表的なクラウドサービスがサポートされています。

導入・カスタマイズ手順の概要

IBM Cloud Tape Connector for z/OSの正式な導入・カスタマイズの手順は、IBMが作成している最新版のマニュアルやガイド資料を参照してください。

この記事では参考として、私が経験した手順の概要を記載します。

  • 利用するクラウドサービスの契約およびセットアップ
  • メインフレームとクラウドサービスを接続するためのネットワーク回線の準備
  • z/OSのカスタマイズ
    • TCP/IP
    • SSL暗号化通信機能の実装(必要に応じて実施)
    • Resolver(必要に応じて実施)
    • ICSF(必要に応じて実施)
  • IBM Cloud Tape Connector for z/OSの導入
    • SMP/E導入
    • PTF適用
    • PARMLIBメンバーへ定義の組み込み
  • IBM Cloud Tape Connector for z/OSのカスタマイズ
    • ISPFパネル設定
    • パラメータ設定(この中でクラウドサービスに接続するための認証情報も設定します)
    • STCの準備
  • STCの起動およびクラウドサービスへの接続確認

以上がIBM Cloud Tape Connector for z/OSを稼働させるまでのおおまかな流れです。

ご覧の通り、製品の導入・カスタマイズだけに限らず、クラウドサービスに接続するためのネットワークの準備や、通信暗号化などのセキュリティ面の機能実装も要件に応じて必要になるのがポイントです。

データ転送の流れを見てみよう

製品の稼働が完了し、メインフレームからクラウドサービスへの接続が確認できたら、いよいよデータ転送を行うことができます。

IBM Cloud Tape Connector for z/OSを使ったデータ転送のやり方は複数提供されていますが、今回は具体的にイメージしやすいように転送機能の一つを利用した例に絞ってご紹介します。

サンプルケース

サンプルとして、下記の環境での利用を考えていきます。

  • 従来から、DFDSS DUMPコマンドを利用し、ローカルサイトのストレージ上にデータ・セットのバックアップを定期的に取得している環境
  • IBM Cloud Tape Connector for z/OSを新たに導入し、DUMPファイルの取得と同時にクラウド上にも同じファイルを保管していく

【データ転送のための作業その1】転送対象のフィルターを設定

キャプチャー転送のフィルター定義を設定する

IBM Cloud Tape Connector for z/OSは専用のISPFパネルが提供されています。このパネルを使用して、各種パラメータの設定や、転送対象にしたいデータのフィルター定義を作成していきます。

下記がパネルを実行したときに開かれる最初の画面です。

CUZ$MAIN V2R1 --------------- IBM Cloud Tape Connector for z/OS ---------------
Option ===> 
2019/11/15 14:59:44 
User: ARK01 - CUZ 
-------------------------------------------------------------------------------
Cloud Connector Started Task Status: Active 
-------------------------------------------------------------------------------
1. Cloud Connector Settings (Parmlib Options) 
2. Cloud Servers Status 
3. Cloud Datasets 
4. Backup History Datasets 
5. Active Tasks 
X. Exit 

「1.Cloud Connector Settings (Parmlib Options)」>「4. Backup Filter Criteria」と画面移動し、フィルター定義を新規作成していきます。

設定できるフィルターは、ストレージクラス、Esotericユニット名、データ・セット名から選択できます。
下記の例では、「BKUP.ARK*」という名前のデータ・セットを転送対象として設定しています。

.------------------------ Cloud Filter Criteria Create ------------------------.
| |
| Filter Type D (Storclass,Esoteric Unit,Dataset,Repository) |
| Cloud Name MYCLD (Previously Defined Cloud Name) |
| Catalog to Cloud N (Yes/No) |
| Retention Period 7 (# Days to Retain on Cloud) |
| Filter Criteria BKUP.ARK* |
| |
| PF12: Cancel |
'------------------------------------------------------------------------------'

設定したフィルター定義を保管し、定義を反映する

ISPFパネルで設定した定義は保管(SAVE)した後、下記のようなリフレッシュコマンドを発行することで稼働中のIBM Cloud Tape Connector for z/OSに定義を反映させることができます。もしくは、STCの再起動でもOKです。

F CUZCLOUD,REFRESH MBR=CUZ#PARM 

これでフィルター設定は完了です。

【データ転送のための作業その2】転送の実行と確認

フィルター条件に合致するバックアップデータを作成する

一度フィルター設定ができてしまえば、データ転送は実は簡単です。

IBM Cloud Tape Connector for z/OSが稼働している状態で設定したフィルター条件に合致するデータ・セットを書き込むと、自動でキャプチャーされ転送が始まります。

今回のサンプルケースの場合、フィルター設定と合致していれば、既存で使用しているDUMPファイル取得のJCLをSUBMITするだけで転送が開始します。

このように、設定次第ではJCLやプログラムを修正する必要がないため、ユーザー側の負荷が少なくて済むのがIBM Cloud Tape Connector for z/OSの利点です。

転送状況の確認

転送されているデータの状況は、ISPFパネルの「5. Active Tasks」画面からリアルタイムで確認できます。

CUZ$DISP V2R1 --------- Active Tasks Display --------- 2019/11/15 15:30:06 
Option ===> Scroll ===> PAGE 
Display Types: Filter Capture Cloud Copy Restore History Queue Restore Queue 
----------------------------------------------------- Row 1 of 3 > 
Jobname Like * 
Dataset Like * 
Cloud Like * 
-------------------------------------------------------------------------------
Dataset Name Total Byte Count Bytes/Sec 
BKUP.ARK01.D191115 34,560,924 640,017 
BKUP.ARK02.D191115 18,596,346 365,335 
***************************** Bottom of Data **********************************

転送が完了すると、この画面からタスクが消えます。

また「3. Cloud Datasets」画面上でクラウド上に保管されたデータの一覧を確認することも可能です。

CUZ$CDSN V2R1 --------- Cloud Dataset Display -------- 2019/11/15 16:03:15 
Option ===> Scroll ===> PAGE 
Primary Commands: REFresh display REStore all in display 
Line Commands : R - Restore D - Delete X -Exclude 
----------------------------------------------------- Row 1 of 106 +> 
Dataset Like * 
Cloud Like * 
Total Bytes 119,369,289,670 111 Gigabytes 
-------------------------------------------------------------------------------
Cmd Dataset Name Backup Timestamp 
BKUP.ARK01.D191115 2019-11-15 15:31:10 
BKUP.ARK02.D191115 2019-11-15 15:32:14 
BKUP.SMF001.D191115 2019-11-15 01:56:52 
BKUP.LOG001.D191115 2019-11-15 01:56:36 
BKUP.ARK01.D191108 2019-11-08 01:57:39 
BKUP.ARK02.D191108 2019-11-08 01:57:36 
BKUP.SMF001.D191108 2019-11-08 01:59:09 
BKUP.LOG001.D191108 2019-11-08 02:01:08 
BKUP.ARK01.D191101 2019-11-01 02:01:06 
BKUP.ARK02.D191101 2019-11-01 01:58:45 
BKUP.SMF001.D191101 2019-11-01 02:01:55 

以上でデータの転送は完了です。

気になるポイント一問一答

最後に、IBM Cloud Tape Connector for z/OSの利用検討にあたって気になるであろう点を一問一答形式でご紹介したいと思います。

ーーこの記事で紹介した例では、データ・セットの書き込み時に自動転送していたけれど、他の転送方法はあるの?

あります。
紹介した例は、順次データ・セットの書き込み時にフィルター基準に合致したものをキャプチャーして自動送信する「キャプチャー・バックアップ機能」です。
この他に、既存のテープまたはディスクストレージ上にあるデータ・セットの中から、フィルター基準に合致したものを定期間隔で自動送信する「ヒストリー・バックアップ機能」が提供されています。

ーー転送するデータ・セットの世代管理はできるの?

キャプチャー・バックアップ機能による転送の場合、最大10世代までクラウド上で管理することが可能です。
ただし、ヒストリー・バックアップ機能による転送の場合は1世代のみのサポートです。フィルター基準に合致するデータ・セットの中で、同じ名前のデータがクラウド上に存在していた場合、そのデータ・セットの転送はバイパスされます。

ーーコンソールから転送完了の検知はできるの?

「Write to Operator Msgs」パラメータ設定(YES/NO)によって、コンソールへメッセージが送信されるように制御することが可能です。転送の開始、完了のメッセージも送信できるようになるため、コンソールから転送完了の検知が可能になります。

ーークラウドストレージからのデータリストアはどうやるの?

リストアの方法は複数提供されています。バッチ、コマンド、ISPFパネルからデータ・セットを指定してリストアできます。

ーー災害時のリカバリーの流れはどうなるの?

災害によりローカルサイトが壊滅してしまった場合、リカバリーの方法として下記のような流れが一例として挙げられると思います。

  1. 別サイトにあるz/OS上でIBM Cloud Tape Connectorをセットアップし、稼働させる。
  2. IBM Cloud Tape Connectorからクラウドサーバーへ接続。
  3. クラウドサーバ―上から、リポジトリファイル(クラウド上に転送したデータを管理しているファイル)を最初にスタンドアロンリストアする。
  4. リポジトリファイルのリストア後、業務復旧に必要なデータをクラウドサーバー上からリストアする。

終わりに

いかがだったでしょうか?

メインフレームのデータの保管先として、新たに「クラウド」が選択肢の一つに加わりました。

保管データの増大、災害対策、物理テープ装置のサポート切れ・・・といったストレージ管理の課題を抱えているお客様にとって、IBM Cloud Tape Connector for z/OSは興味深い製品になるのではないでしょうか。

バックアップ運用の課題をかかえているお客様はもちろん、メインフレームのデータを、より拡張性かつ可用性の高い環境で保管することに興味のある方は参考にしていただければ幸いです。

お客様が求めるシステムを提供するため、私たちも新たな技術領域を学んでいかなければなりません。今後も役立つ情報の収集と発信をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

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