

ITコーディネータ資格とその活動内容を紹介します
システムマネジメントサービス部 大川です。
みなさんは「ITコーディネータ」という資格をご存じですか。
当社ではここ数年間で13名の社員が資格を取得しています。(2020年4月時点)
今回の記事では、このITコーディネータという資格について、
- どのような資格なのか?
- どうすれば資格を取得できるのか?
- 資格取得後はどのような活動をするのか?
- 私が個人的におすすめする理由
を中心に紹介したいと思います。
ITコーディネータとはどのような資格なのか?
ITコーディネータは、真に経営に役立つIT利活用に向け、経営者の立場に立った助言・支援を行い、IT経営を実現する人材です。
2001年に当時の通商産業省による国家プロジェクトの一環として資格制度が設けられ、現在は経済産業省の推進資格として、約6,500名の資格保有者が全国各地で活動しています。
その他にも特徴として、
- あらゆる業種や多様な職域で活躍している
- 高い専門性とネットワークによる幅広いサポートを行っている
- 商工会議所や中小企業診断協会など、日本企業の経営を支援する多数の団体が応援している
といったものがあります。
どうすれば資格を取得できるのか?
ITコーディネータ資格を取得するためには、
- ITコーディネータ試験に合格すること
- ケース研修を受講・修了すること
が必要です。
試験とケース研修の順番はどちらが先でも大丈夫です。
私はケース研修を受講後、ITコーディネータ試験を受験しました。
ITコーディネータ試験
いわゆる筆記試験です。120分間で100問に答える選択式のテストになっています。
受験にあたって特に条件はなく、ITコーディネータに必要な専門知識と実務経験を有している方であれば、どなたでも受験ができます。受験料は19,800円(税込)です。
ITコーディネータ固有の考え方や用語が多数出題されるため、テキストの内容をしっかりと理解する必要があります。私はすきま時間を活用し、1ヶ月ほどの学習期間で一発合格することができました。
例えば、このような選択問題が出題されます。
経営戦略プロセスにおける活動はどれか。
ITコーディネータ試験【PGL Ver.3.1対応版】 見本問題と解説40問:2019.9.10更新版
ア.IT戦略目標が達成されているかを評価して,業務プロセスの円滑な遂行を支援する。
イ.外部環境変化に対する経営者と運営体制や社内の経営資源に関する情報を把握する。
ウ.企業の競争力強化を目指して,経営の成熟度に応じたIT戦略の実行計画を策定する。
エ.目標とするシステムの機能や計画した概算費用を考慮して,提案依頼書を作成する。
ケース研修
ITコーディネータ資格認定に必要となる研修プログラムです。eラーニングと集合研修があります。
まずはIT経営の考え方とプロセスの全体感をeラーニングでつかみ、ケース企業を用いた集合研修でIT経営プロセスを一気通貫で演習します。
集合研修ではITCインストラクターの指導のもと、個人ワーク、グループワークを繰り返すことで、実践的で応用的なスキルを身につけることができます。
集合研修は合計で6日間行われ、平日だけでなく、土日中心のコースも予定されているため、仕事をしながらでも参加しやすいスケジュールとなっています。研修受講に必要な費用は、220,000円(税込)です。
個人ワークやグループワークは、実際に業務の中で現状のヒアリングや課題整理、提案などを経験したことがある方には比較的わかりやすい、取り組みやすい内容です。ただ、持ち帰りの課題もあるので、6日間参加して終わりではなく、自習期間も含めて密度の濃い研修でした。
資格認定
ITコーディネータ試験の合格、ケース研修の受講・修了の条件をクリアしたら、いよいよ資格認定です。
認定登録料20,000円(税別)を支払い、資格の認定を受けることで、初めて「ITコーディネータ」と名乗ることができます。
ただし、資格認定は一度受けて終わりではありません。
資格には有効期限があり、継続するためには具体的な活動報告や研修受講が必要です。活動報告や研修の受講時間に応じてポイントを獲得することができ、更新には年間10ポイントの獲得が必要です。
目安としては、1日の研修を年間3日~4日程度受講することで10ポイント以上獲得することが可能です。資格の更新手続料として、20,000円(税別)が必要になります。
ITコーディネータとして活動するためには、最新のIT経営の動向や事例を継続的にキャッチアップする必要があります。
どのような活動をするのか?
資格を取得後、具体的にどのような活動をするのでしょうか。
ITコーディネータは、中小企業からの相談や依頼に基づき、問題分析やITを活用した改善提案を行います。
資格取得後、すぐに支援の相談や依頼がくるわけではありませんが、実際にITコーディネータとして活動されている方のお話を聞くと、
- 地域の商工会議所や銀行、その他の団体からの個別相談などにより仕事の依頼を受ける
- 実際に企業を訪問し、複数回のヒアリングや打合せを通して問題分析や改善提案を行う
というケースが多いようです。他にも企業内でITコーディネータとして活躍されている方も多数いらっしゃいます。
ITコーディネータをおすすめする理由
ここまででITコーディネータ資格に関する情報や取得方法、活動内容について紹介しました。
冒頭でお伝えした通り、当社ではここ数年間で資格取得者が増加しています。
それぞれ資格取得の目的が異なる人もいますが、私が個人的におすすめする理由は以下の3つです。
経営課題や業務課題からアプローチができる
以前の私は、課題を聞いて、それを改善・解決するためにITをどのように活用するかといった視点で物事を考える傾向がありました。この課題を解決するにはこういうシステムを導入すればよいのではないか。そういった単純な発想でした。
しかし、ITコーディネータの学習を通して、ITありきではなく、経営者や事業部門の人たちが考える本質的な課題や優先度の高い課題は何なのか。業務プロセスに問題はないのか、そもそもその業務自体が必要なのかといった経営・事業視点から物事を考えることができるようになりました。
普段あまり関わりがない業界や企業の様子がわかる
経営課題や業務課題からアプローチするためには、
- お客様のビジネスはどのようにして成り立っているのか。どのようにして売上・利益を獲得しているのか。
- 業界や業種の特徴はどのようなものがあるのか。それはビジネスやITにどのような影響を及ぼすのか。
- IT部門の担当者ではなく、経営者や事業部門の人たちはどのようなことを考えているのか。
といった視点が必要です。
ITコーディネータ資格を取得する中で、このような疑問に対してどのような知識を習得することが必要なのか、どのようなアプローチをすれば改善につなげることができるのか、といった答えが少しずつ見えるようになってきました。
人を引きつける魅力、巻き込む行動姿勢が身につく
ITコーディネータはIT経営を実現するプロフェッショナルです。経営者の立場に立った助言・支援を行う存在です。
そのためには知識やノウハウを身につけることはもちろんですが、ケース研修のロールプレイングを繰り返す中で「人を引きつける魅力」や「関係者を巻き込む積極的な行動姿勢」が大切だということを感じました。講師の方の印象的なコメントに「経営者は何を言ったかはもちろん、誰が言ったかを重視する場合がある」というものがありました。
課題の解決やあるべき姿を実現するためには、経営者をはじめとする多くの人たちからの信頼を獲得し、関係者を巻き込み、ともに行動してもらう必要があります。いくら良い提案を考えたとしても、その内容が関係者に受け入れられ、実現に向けた協力を得ることができなければ絵に描いた餅です。
経営者や関係者の方々と一緒に共感性の高いビジョンや方針を掲げ、実現に向けた具体的な行動を策定し、関係者が一体となって汗をかき、努力を続け、目的を達成する。この行動姿勢は当社の経営方針である「お客様のそばで、お客様のためのITを」とも共通する部分です。
このような魅力や行動姿勢がすぐに身につくものではありませんが、日々の業務においても強く意識した行動を心がけています。
おわりに
ITコーディネータについて、資格の内容や取得方法、活動内容、個人的におすすめする理由を中心に紹介しました。
私自身はまだITコーディネータとしての具体的な活動が十分にできておらず、活動の成果を語ることはできませんが、資格取得と更新の過程を通して、「ITコーディネータをおすすめする理由」に記載したような多くの発見と行動の変化がありました。
今後はこの資格を活用し、お客様に対してどのようなサービスを提供することができるのか、当社で取得したメンバーとともに議論をしながら、次のアクションに取り組んでいくつもりです。
ちなみに試験やケース研修、資格の登録や更新には一定の費用がかかりますが、当社では全額会社から補助が出ています。こういった教育活動に力を入れている点も当社の魅力のひとつです。
今回初めてITコーディネータという存在を知った方、活動内容に興味を持たれた方は、ぜひITコーディネータ協会のサイトから詳しい情報を確認してみてください。