【運用管理の勘所③】「構成管理」とは?

2011年3月29日ITIL Foundation,運用管理

システムマネジメントサービス部の佐藤です。

「運用管理の勘所」第3回目は「構成管理」について解説します。

「構成管理」とは?

「構成管理」とは

構成管理とは、システムを構成する物理/論理資源とその環境を、常に正確に把握するための管理を指し、目的は次の2点です。

  • 物理/論理資源の最新状況の把握
    • 物理資源とは
      • ハードウェア、ネットワーク、サーバー、PCなど
    • 論理資源とは
      • ライセンス、ソフトウェア、接続構成など
  • 資源の有機的接続状況の把握

構成管理はシステム構成の最新状況(現状)を正確に把握するという、運用上、最も基礎的な管理です。システムを構成するすべての要素が管理対象となるため、この情報の確かさが、安定的なシステム運用の要となります。

構成管理はシステム構成の最新状況(現状)を正確に把握するという、運用上、最も基礎的な管理です。

いかなるときも"使える"情報としてメンテナンスしておくこと !

構成管理で管理されるシステム構成情報は、すべての運用管理の基礎となる情報です。

  • 変更作業や障害発生時の原因分析や影響分析(影響範囲の特定)など、日々発生する様々なシステム運用業務に必要
  • 企業が所有する機器やソフトウェアを資産として管理する「資産管理」との情報連携に必要
  • 「稼動管理」や「性能管理」において、管理基準の見直しに必要
  • 「回復管理」において、問題箇所特定、原因切り分けに必要

というように構成情報はあらゆる場面で利用されるため、常に最新のシステム構成を反映していないと、運用全体の品質が損なわれることになりかねません。では、信頼性の高い構成管理を行うにはどうすればよいのでしょう。重点ポイントは4つです。

構成情報はいつも最新に

構成管理では、機器やソフトウェアなどの新規導入や廃止といった情報を、確実に把握・反映し、構成情報が常に最新の状況(情報)となっていることが極めて重要となります。

実際のシステム構成と管理情報にズレが生じると、現状構成が信頼できないものとなるばかりか、トラブルの原因になってしまうことさえあるのです。

最新情報の反映は強制的に

例えばコンピュータ・システムに対して変更を行う場合、構成管理で把握する構成情報を基に、変更計画が作成され、変更管理のもと変更作業が行われます。

変更によるシステム構成要素の追加・変更・廃止については、その結果(構成情報)が構成管理に確実にフィードバックされるような強制力を持たせるしくみを考えましょう。

構成情報は階層化、システム化を

全体から末端までの情報を迅速に把握しやすくするために、システム構成を階層的に記述することが重要です。例えば、

1ページでシステム全体の概念図を作成

  1. 規模に応じてこの中の一つのサブシステムを1ページで記述
  2. さらに構成要素ごとに詳細化
  3. これをもとに、機器IDを付与し、ID順の全機器一覧を作成

という階層化です。また構成機器やソフトウェア数が多くなると、すべてを紙で管理するには矛盾なく最新化するのが困難なため、システム化する方が無難でしょう。

クライアント環境ももれなく

システム運用部門が掌握しているコンピュータセンター内の機器は上述のような構成管理のしくみを用意すれば、情報の最新化を保つための集中管理が可能です。

しかし、クライアントパソコンやフロアプリンタ、拠点内LAN設備については、組織変更や社員の増減により、購買部門で新規購入や廃棄が実施され、システム部門が把握できない場合もあるため、こういったケースでも確実に、構成管理へ情報を反映できる体制・業務フローを整える必要があります。

また、デスクトップ資源は、利用ユーザーなどが容易に変更できるものが多いため、動的な変更情報を確実に収集するしくみが必要です。デスクトップ資源の構成情報の基となるインベントリ情報などを、自動収集・自動反映するしくみを、ツールを利用してシステム化するのも1つの方法です。

体制

構成管理を実施する上での責任者・担当者などの体制を整備し、役割を明確化することにより、より円滑な精度の高い構成管理を進めることが可能となります。以下にその例を示します。

名称と主な役割

  • 構成管理責任者
    • 構成管理における全責任を負う(例:システム運用部長)
  • 構成管理担当者
    • 構成管理を行う。変更管理や回復管理と密接に情報共有ができ、必要な修正・反映を構成規定書に対して実施させる強制力を持つ(例:システム運用課長)
  • システム運用担当者(全般)
    • 日々の運用管理業務(システム変更作業、障害対応作業などすべて)を通じて、構成規定書の修正や新規作成を行っていく(例:運用担当者)

管理対象と管理内容

管理対象の各資源の構成情報を図表、一覧などで管理し、かつ、最新の構成情報を維持します。管理対象と管理内容は以下の通りです。

ハードウェア構成

全体的な接続構成、機器一覧、ハードウェアごとの詳細な環境設定という3つのレベルで管理を行う。

  • ハードウェア接続構成
    • ハードウェア全体の構成を把握するために、全体の接続図を作成、管理する
  • ハードウェア機器一覧
    • システムを構成するハードウェア機器について、その種類や機種番号、メーカーなどについて一覧表を作成し、管理する
  • 各ハードウェア構成(仕様・設定)
    • ハードウェア機器ごとの仕様(搭載スペック、能力など)や環境ごとの設定(設定値)などについて、個別に文書として作成し、一元管理する

ソフトウェア構成

ソフトウェア一覧、ソフトウェアごとの詳細な環境設定、ソフトウェアと業務アプリケーションとの関連という3つのレベルで管理を行う。

  • ソフトウェア一覧
    • 導入されているソフトウェアについて、その種類やソフトウェア名、バージョン、メーカーなどについて一覧表を作成し、管理する
  • ソフトウェア構成(環境・設定)
    • 各ソフトウェアにおける機能概要、設定や導入構成(ディスク装置、ファイル名、各パラメータ設定値、ユーザーによるカスタマイズ、一時修正など)について、個別に文書として作成し、一元管理する
  • ソフトウェアと業務アプリケーションの関連図
    • ソフトウェアとそれを使用している業務アプリケーションとの関連を、マトリックスとして管理すると、変更時や障害時の切り分けがしやすく便利である

ネットワーク構成

接続構成、機器一覧、機器ごとの詳細な環境設定、回線一覧という4つのレベルで管理を行う。

  • ネットワーク接続構成
    • ネットワーク全体の構成を把握するために、全体の接続図を作成し、管理する
  • ネットワーク機器一覧
    • ネットワークを構成するネットワーク機器について、その種類や機種番号、メーカーなどについて一覧表を作成し、管理する
  • ネットワーク機器構成(詳細)
    • 各ネットワーク機器の仕様(搭載スペック、能力など)や環境ごとの設定(設定値)などについて、個別に文書として作成し、一元管理する
  • ネットワーク回線一覧
    • 回線については、以下の項目を一覧表で管理する。「回線名(ID)、ライン名 」「品目、速度、回線区間」「起点/終点情報(住所、ビル名、フロア、担当(申請)者、MDF/IDF番号、収容場所、接続機器、自営業者、連絡先など)」「開通日など」

デスクトップ構成

クライアントPCやプリンタの、ハードウェア構成、ソフトウェア構成、利用者など、構成情報を管理する。

デスクトップ資源における管理情報は、利用ユーザーなどにより容易に変更されるものが多く、こういった動的変更についても、確実に情報収集が可能となるよう、デスクトップ資源の構成情報の元となるインベントリ情報の収集などは、ツールなどを利用し自動収集、自動反映するしくみ(システム化)が必要となる。

クライアントPCやプリンタの、ハードウェア構成、ソフトウェア構成、利用者など、構成情報を管理する。デスクトップ管理には、以下のような項目が必要である。

  • クライアントPCの利用者などの構成情報
    • 資源番号(パソコン番号、プリンタ番号)、機種名、使用者、使用者ID、使用者所属部門、利用場所(拠点名、フロア)など
  • ハードウェア構成
    • CPU、メモリ、ハードディスク、ネットワークカード(LAN、モバイル(携帯、PHS))など
  • ネットワークアドレス
    • Macアドレス、IPアドレスなど
  • ソフトウェア構成
    • 導入ソフトウェアとバージョン(OS、OAツール、ブラウザ、言語環境、ドライバ、アプリケーションなど)
  • ソフトウェアライセンス情報
    • ソフトウェアの契約、ソフトウェアの契約本数と実利用本数

設備

  • 管理部署の明確化
    • システム運用の視点では、マシンセンターやマシンルームといった、サーバー設置用フロア施設の設備を対象とする。一般的に事務用オフィス(フロア)については、総務部門が管理する
  • 設備に含まれる項目
    • 電源系(電源容量、分電盤、UPS、CVCF、非常用発電装置など)。空調系(容量、設定など)。フロアレイアウト(レイアウト図、フリーアクセス、ケーブル配線、ケーブル長など)

いかがでしたでしょうか。次回は「性能管理」について紹介します。

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