Zabbix Summit 2019 アジェンダ

Zabbix Summit 2019 参加!世界が重視する3つのポイント

2019年11月14日Zabbix,Zabbix Summit

こんにちは。プラットフォーム技術部の新井です。

2019年10月11~12日にラトビアの首都、リガで開催された Zabbix Summit 2019 に、私たちアークシステムはスポンサー企業の1社として参加しました。

この記事では、Zabbix Summit の雰囲気や海外の Zabbix 利用者が発表した登壇内容を、日本の Zabbix 利用者のみなさまにお届けしたいと思います。

Zabbix Summit とは?

ご存じの方も多いと思いますが、全世界からITエキスパートや Zabbix コミュニティメンバー、Zabbix 開発チームが Zabbix の本拠地であるラトビアに集まり、システム監視に関する情報やそのビジョンを意見交換する場所です。

今回は45カ国、約500名が参加しました。

Zabbix Summit 2019 会場の様子

2019年の Zabbix Summit では、以下のイベントが開催されました。

  • 世界各国における各種事例、技術情報の発表
  • Zabbix 新機能のワークショップ
  • Zabbix 認定エキスパート試験

Zabbix Summit 前日にはグローバルパートナーミーティングが開催され、次期 Zabbix への展望や今後 Zabbix に取り入れてほしい機能やサポートについて、Zabbix 社と各国のパートナー企業とのディスカッションの場が持たれました。

Zabbix Summit 当日の様子

アジェンダならびに登壇内容は、こちらの Zabbix Summit 2019 公式サイトをご覧ください。

想像以上の監視規模、中国の事例は監視対象が 65,000 以上あった

中国の Andy Zhou 氏が発表した『Zabbix integration with Big Data System in large-scale environment』という大規模監視環境の事例がとても興味深かったので紹介します。

監視対象 65,000 以上、1秒間あたりの監視項目数(NVPS)が 60,000(将来的には 320,000以上)を超える大規模監視を Zabbix で実装するためのチューニング概要を発表していました。

大規模監視環境におけるパフォーマンスチューニングの項目

Zabbix のチューニングとしては、考えうることを全て実施。その実施内容は下記のとおりです。

  • Web サーバーを Apache から Nginx に変更
  • Zabbix 設定パラメーターのチューニング
  • MySQL 設定パラメーターのチューニング
  • MySQL テーブルのパーティション化
  • OS カーネルパラメーターのチューニング
  • ディスク装置に SSD を使用
  • アイテム取得間隔のチューニング
  • サーバーハードウェアのアップグレード

負荷分散は、オーソドックスに Zabbix Proxy を複数台設置することで対応しています。

当社でも NVPS が 8,300 の環境構築事例があり、日本国内での Zabbix 活用事例としては、まずまず大規模な環境でした。しかし、NVPS が 60,000 以上、そして今後は 320,000 以上を目指すという話は想像もつかない規模感!

Zabbix が監視エンジンとして高品質であることが大前提となりますが、あらかじめ対応可能なチューニングはすべて行い、それ以外の細かな点は日々動かしながら改善し、監視基盤を支えている。そのような印象を持ちました。

他の大規模活用事例や、Zabbix をシビアな環境で使うためのクラスタリングについて、具体的な実装方法の発表もありました。

海外では Zabbix を大規模なエンタープライズ環境で活用するのが普通であり、その活用事例が Zabbix Summit をはじめ、コミュニティや各国で開催されるカンファレンスなどでシェアされ、さらに Zabbix の活用が広がっていくという、良い循環を感じました。

Zabbix 社からインタビューを受ける

当社マーケティング部の坂が Zabbix 社よりインタビューを受け、その時の様子が YouTube にて全世界に発信されました。その様子をぜひご覧ください。

質問いただいた内容と、その回答は以下のとおりです。

ーーTell us about what do you guys offer on Japanese market, what kind of services you provide?(あなた方は日本市場でどのようなサービスを提供しているのですか?)

:The Arksystem is strong in infrastructure construction technology and operation management, and is good at making high-quality Zabbix using it.We also offer a total service from package service to maintenance support, which is a menu for building Zabbix.(アークシステムは強みとするインフラ技術と運用管理技術を活用した高品質な Zabbix を作るのが得意です。また Zabbix の構築をメニュー化したパッケージサービスから保守サポートまで、トータルなサービスも提供しています。)

ーーHow do you see how things are going for you in Zabbix?(あなた方はZabbixの(今後の)展開をどのように見ていますか?)

:I think Zabbix users are increasing in Japan.Also, requests for Zabbix are becoming more complex, and I feel that customers’ requests such as the use of monitoring data and IoT collaboration are becoming more sophisticated every day.(日本の Zabbix ユーザーは増え続けていると思います。また Zabbix で行う監視は複雑さを増していて、監視データの活用や IoT 連携などお客様の要望は日々高度化していると感じます。)

世界が求める Zabbix と今後の開発方向性

Zabbix Summit やグローバルパートナーミーティングに参加して、その場で感じたことをお伝えします。

海外企業は、高可用性・拡張性・冗長性を求める

海外のユーザーが Zabbix に強く求めているのは高可用性(High Availability)・拡張性(Scalability)・冗長性(Redundancy)であり、大規模環境での活用要望が強いことが伺えました。

Zabbix 社もこのようなユーザーニーズを受け止めつつ、監視という枠組みの中での品質向上を第一に置いた開発を行う姿勢を強く打ち出していました。

海外企業は運用に必要な機能のすべてを Zabbix に求めていない

海外のパワーユーザーは、システム運用のために必要な機能のすべてを Zabbix に求めておらず、データ解析や画面、JOB 製品などは他の適した製品と組み合わせて使うのが当たり前の感覚でした。

前述した『Zabbix integration with Big Data System in large-scale environment』の事例においても、Zabbix を中心に、

  • Filebeat: 必要なファイルの収集
  • Logstash: データ変換と一元化
  • Elasticsearch: 検索エンジン
  • Kibana: ビューワー

を用いて適材適所なソフトウエアの実装と本番運用をしており、利用者側のスキルの高さを垣間見ることができました。(日本国内でも対応可能な内容ですね。)

しかし残念ながら、日本側で要望がありそうな、オールインワンである商用製品のような監視画面や JOB 管理機能は Zabbix には実装されなさそうです。

Zabbix 社が考える、今後の開発方向性

海外では公式サポートに新たなグレードが追加される

Zabbix 社の公式サポートに Enterprise や GLOBAL I(※) というグレードが新設されるにあたり、一部のパートナーからは「オープンソースであるべき理由、顧客への価値は何なのか?」的な質問もなされました。
※ 注:2019年11月現在、日本での展開予定はありません。

Zabbix CEO の Alexei Vladishev 氏よりあらためて、オープンソースであることによる広がりや Zabbix 社によるエンタープライズ環境での利用サポート、ベンダーロックインでないことによるメリットなどが説かれ、熱い議論がなされていました。

私たち含め、日本のパートナー企業は Zabbix の技術的な質問はいくつか持っていましたが、それほど Zabbix に対して大きな要望を持っているわけではなかったため、グローバルパートナーの要望や自由な発言には驚かされました。

Zabbix の開発方向性

Zabbix Summit の前夜に開催されたグローバルパートナーミーティングでは、Zabbix 社から Zabbix の開発の方向性が示され、それらについてグローバルパートナーとさまざまなディスカッションがなされました。

執筆時点では内容を直接掲載できないのですが、話題に上がった機能のうち、当社としては下記の様な機能が実現されると、より Zabbix の可能性が広がると感じました。

  • AI(人工知能)やML/Machine Learning(機械学習)を活用したベースライン監視
  • 高可用性、拡張性、冗長性への対応
  • ビジュアルとレポート機能の強化

2020年にリリースされる予定の Zabbix 5.0 LTS を楽しみに待ちたいと思います。

世界中の Zabbix 技術者と交流

Zabbix Summit の前後で、Zabbix 社主催によるパーティーが開催されました。

こうしたパーティーのおかげで、参加者の皆さんとフランクに会話ができるチャンスが自然と生まれ、Zabbix Summit 期間中、ラトビア、オランダ、ブラジル、ポルトガル、ドイツ、中国、トルコ…etc、さまざまな国の技術者とお話しすることができました。

何名かの登壇者の方ともお話しできたのですが、とある方は

「ものすごく緊張して震えた。脈拍が180を超えちゃった。」

とおっしゃってましたが、やり切った充実感にあふれていました。同じテーブルにいた方は「来年は私も登壇したい、するよ多分!」と目を輝かせていました。

このような自身の体験・知見を積極的にシェアしようとする姿勢は、私たちも見習わねばと強く感じました。

また、意外と日本について知ってる方が多かったのも驚き!

うどんの出汁についてご存じな方がいらして、パーティーでは Zabbix の話題そっちのけで各国の食べ物談義でも盛り上がってしまいました。

最後に

来年も参加!!となるかは分かりませんが…

今回、海外の皆さんと Zabbix を軸として技術・ビジネスの話を通じて交流できたこと、海外と日本との違いを感じることができたことは素晴らしい体験でした。参加できて本当によかったと思っています。

今後も海外の Zabbix 事情についても関心を持ちつつ、日本市場での Zabbix の活用がより進むよう、さまざまなことにチャレンジしていきたいと思います。

海外目線で見た Zabbix のポイントは、

  • Zabbix は監視対象が 65,000 以上あるようなエンタープライズ環境でも活用できる
  • エンタープライズ環境で活用するために、高可用性・拡張性・冗長性を求めている
  • システム化ならびに運用にあたって適材適所な実装をおこない、製品・機能を組み合わせて使う

ですね。

当社では Zabbix Summit の終了後、Zabbix CEO の Alexei Vladishev 氏にインタビューをしました。その内容を以下のページで公開していますので、あわせてご覧いただけますと幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

アークシステムは Zabbix Japan LLC の認定パートナー企業です。 当社はZabbixバージョン1.1の時代から監視ソリューションの活用を進め、Zabbixに関する製品・サービスの販売に加え、Zabbix関連サービスの提供を行っています。

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