ナレッジ共有のサイクルをまわしたい

SECIモデル,ナレッジ共有,リモートワーク

こんにちは、ソリューション開発部の佐々木です。

みなさんは仕事中に何か困ったことがあったとき、「社内で過去に似たような事例はなかったかな?」「この技術に知見のある人は部内にいたっけな?」と思うことはありませんか? そして、「そういう情報がどこかにまとまっていてくれたら便利なのに」と感じたことはありませんか?

現在私は通常業務に加えて、社内プロジェクト(以降、「プロジェクト」は「PJ」と略します)として情報共有PJの活動をしています。情報共有PJでは部内でのナレッジ共有に向けた施策を進めており、前述のような「そういう情報がどこかにまとまっていてくれたら便利なのに」を解決したいと思いながら、さまざまな施策に取り組んでいます。

今回は、これまでPJ内で検討してきた内容を共有いたしますので、私たちと同じように、社内または部内のナレッジ共有について悩みを抱えている方と苦労を分かち合えると嬉しいです。

リモートワークによって部内交流が減ってしまった

コロナ禍以降、ソリューション開発部のメンバーはほぼリモートワークになりました。2025年12月現在もその体制は変わっていません。基本的にはオンラインで業務にあたっていますし、部会もオンラインで開催しています。

その一方で、新規メンバー参画時など必要に応じてオンサイトで共同作業を実施しているチームもありますし、チーム内での懇親会や部の忘年会は対面形式で開催しているので、部内のメンバーと交流する機会がなくなってしまったわけでもありません。

ただ、リモートワークになる以前から客先常駐と本社勤務のチームでは横断した交流が少なく、リモートワークが主流になってからは交流がさらに見られなくなってしまいました。

リモートワークになる前は、少なくとも本社オフィスに勤務しているメンバーであれば、困っている若手に他のチームの先輩がアドバイスをしたり、給湯室やエレベーターホールで顔を合わせたときに軽く近況報告をすることもあったんですけどね……。

こういった部内交流によって業務に活かせる知見や情報も得られていたので、ちょっと残念な状況です。

部内でナレッジを共有したい

ビジネスシーンにおいては企業や組織にとって有益な情報を「ナレッジ」と呼びます。リモートワーク以前の部内交流で得られていた知識や情報もナレッジですね。このナレッジを活用して部内をもっと良くしたい、楽したい、という目的の元に活動しているのが、ソリューション開発部の情報共有PJです。

ナレッジを活用するために、まず部内でナレッジを共有する仕組みを整備していこうというのが今の情報共有PJの目標です。ただ、前述のとおり今のソリューション開発部ではナレッジを共有する機会が激減しています。

「それならリモートワークを止めて、みんなが出社すればいいのでは?」というご意見が飛んできそうですが、リモートワークにはリモートワークの良さがあるわけで、ここは両立させていきたいところです。

SECIモデルをまわしてみよう

部内でナレッジを共有するにはどうすればいいのか?それを考えるために、私たちは部内のナレッジマネジメント有識者から教わった「SECIモデル」を参考にすることにしました。

SECIモデルとは?そして、Ba(場)とは?

SECIモデルとは、1990年代に野中郁次郎氏が知識創造理論の中で提唱したナレッジを創出する活動プロセスです。

SECIモデルとBa(場)のイメージ図
SECIモデルとBa(場)のイメージ図

共同体験・観察を通じて個人の暗黙知を共有する「共同化」、対話や議論により暗黙知を共有し言語化・図式化して形式知にする「表出化」、集まった形式知を統合・編集・体系化し新たな形式知を生み出す「連結化」、学んだ形式知を個人が実践で取り入れ、内なる暗黙知として定着させる「内面化」という4つのプロセスを繰り返すことにより、暗黙知と形式知が循環し、新しい知識を生み出していくのがSECIモデルの考え方です。

また、「知識は“場のない空中”では生まれない」「必ず、何らかの環境・関係・コンテクストが必要である」というSECIモデルの抱える課題から、SECIモデルを支えるBa(場)という概念が生まれました。

暗黙知が共有される原点となる「創発場」、暗黙知が言語化される「対話場」、形式知が統合・結合される「システム場」、形式知が実践され暗黙知として吸収される「実践場」という4つの場の上でSECIモデルの各プロセスが発生します。

今の状況をSECIモデルとBa(場)で整理してみた

SECIモデルとBa(場)をベースに、まずはソリューション開発部の中でナレッジ共有に結び付くと思われる活動を整理しました。

SECIモデルとBa(場)のイメージ図をベースに今の状況を整理した
SECIモデルとBa(場)のイメージ図をベースに今の状況を整理した

一見すると4つの場に当てはまる活動が既に存在しているように見えます。ですが、ひとつひとつの活動に注目してみると、クローズドな環境で完結してしまっているものが多く、場として十分に機能しているとは言えないという結論に至りました。

例えば、ふりかえりはチーム内や若手社員とメンターのあいだで実施されます。ふりかえりの中で個人の困りごとやその解決方法は共有されますが、その内容がチームの垣根を越えて共有されることはありません。朝会や夕会もチーム内で実施されるので同様です。

勉強会も参加した人たちの中で終わってしまうことが多く、分科会の内容は部会で発表されているのですが、どちらかといえば活動報告の側面が強いです。

そうなると、部全体で共有できている活動は多くの社員が集まる全社MTG(※)や部会での個人発表くらいになってしまいます。ですが、いきなり部会や全社MTGで個人の経験や知見を発表するのはハードルが高いですよね。また、全社MTGも部会も一方的な発表になりがちで、双方向でのコミュニケーションはなかなか難しいです。

SECIモデルを回すためにも、部内で各プロセスの場を創り出していく必要がありそうです!

※全社MTGとは、社内の商況報告や各部門のPJ報告などをする全社規模のミーティングです。月に一度、オンサイトとオンラインを併用して開催しています。

共同化のための施策

SECIモデルを回すためのスタートとして、まずは共同化を推し進めていくことにしました。

共同化のための場である創発場を作っていくにあたり、ポイントとしたのは「参加のハードルを低くすること」です。事前準備なしで参加できることに加えて、部内で既に定着しているイベントやツールを活用した方が、みんなで集まる場を新規で設けたり、新たなツールを導入したりするより、受け入れやすいのではないかと考えました。

試行錯誤の末、「少人数フリートーク」と「分報」の二つの施策が今も部内で続いていて、定着しつつあります。

少人数フリートーク

月に一度、Teams上でオンライン開催している部会を活用できないかと考えて導入したのが、少人数フリートークです。名前の通り、少人数に分かれて会話するイベントで、部会の中でおおむね以下のような方針で実施しています。

  • ブレイクアウトルームを使ってランダムに部屋分けする
  • 一部屋の人数は3~4名
  • 毎回テーマを設定して、そのテーマで会話する
  • 時間は15分程度

まずは部内にどんな経歴や得意分野を持った人がいるかを知ってもらい、困ったときに相談できる人を部内に増やそう!というのが少人数フリートークの狙いでした。

今後は上記の狙いに加え、年間を通して各人が持つ暗黙知を引き出せるようなテーマをあらかじめ設定し、創発場としての役割をより強化できればと考えています。

分報

分報とは、日々の業務の進捗や、感じたこと、考えていることなどを分単位で報告・共有するコミュニケーション手法です。

ソリューション開発部では、Teams上に分報チームを作り、その中に部内の各メンバーが自分の分報チャネルを作っています。分報に書く内容は特に決めておらず、各々がそのとき思ったことを自由に書いています。いうなれば、社内SNSのような感じですね。

分報では、業務外秘の情報や個人情報を載せることは禁止としていますが、基本的には投稿内容に制限をつけていません。そのため、使い方は人によってさまざまです。

例えば、Copilotを業務上でどう活用しているかをメモしたり、技術系記事をまとめたり、オンラインのフォーラムに参加した際に気づいたことや気になったことを書き留めたり。ちなみに私は、趣味であるバスケ観戦の記録を延々と書いています(笑)

ここから共通の技術に興味を持つ者同士で盛り上がってさまざまな情報が集まったり、困りごとがあったときに部内のメンバーから知見が寄せられたりするようになると、暗黙知の共有に繋がっていくのではないかと思っています。

共同化→表出化につなげたい

少人数フリートークや分報が盛り上がるのは良いことですが、その場限りで話を終わらせてしまっては施策を導入した意味がありません。ここから表出化に繋げる次の手も考えていきます。

表出化への第一歩

少人数フリートークと分報がとっかかりとなって、有識者が集まってのディスカッションや、勉強会が開かれる等、対話場が生まれていくことが理想的な流れです。

分報はオープンな環境で行われているので、後からでも会話に参加できます。ツリーが長くなっているトピック=盛り上がっているトピックなので、盛り上がっている分報も見つけやすいですし、そこから対話場となるイベントの開催を情報共有PJで促してみてもいいかもしれません。

一方で、少人数フリートークは面白い会話があったとしても、フリートーク終了後に他の人が会話に参加することはできません。そのため、有益な会話があったルームの参加者が、後から自主的に話題を部内に共有していかなければ、部内のメンバーを巻き込んでの展開が難しいのではないかと思いました。ここは情報共有PJでもうひとつ何か施策があってもよさそうです。

ということで、フリートーク終了後の各部屋の会話内容は、生成AIを利用して情報共有PJでまとめ、Teams上に掲載することにしました。これなら分報と同じように、興味を持った会話に後から参加できます。Teams上でもさらに話が盛り上がったら、次の対話場に繋げることもできそうです。

今後の展望

共同化の施策をさらに強化していくこと、そして、表出化を推進していくことが今後の情報共有PJの課題です。

欲を言えば、共同化から表出化の流れで形式知となった情報をブログ記事としてまとめて公開することもできたらいいなあなんて思ったりもしています。(情報共有PJは元々ソリューション開発部の情報発信を目的としておりましたので)

みなさま、今後の情報共有PJの活動にぜひご期待ください!

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