

Zabbix 6.xで追加されたAWS Amazon RDS監視テンプレートの使用方法
こんにちは!プラットフォーム技術部の小羽根陸です。
前回の記事では、Amazon EC2を監視するテンプレートの使用方法を紹介しました。
今回の記事では、Amazon RDSを監視するテンプレートの使用方法を紹介します。
RDSのテンプレートもEC2のテンプレート同様、テンプレート内にJavaScriptが用意されているため、ユーザーがシェルスクリプトを作成する必要がなく簡単に監視ができます。
AWS Amazon RDS監視テンプレートの説明
今回はRDS監視テンプレートとして「AWS RDS instance by HTTP」を使用します。
RDS用のホストにテンプレートをリンクすることで、DBインスタンスイベント、およびDBインスタンスのアラームをCloudWatch API経由で取得ができます。
「AWS RDS instance by HTTP」テンプレートでは、以下のアイテム内でJavaScriptを使用し、複数のメトリクスデータを収集します。
- AWS CloudWatch: Get instance alarms data
- AWS RDS: Get instance events data
- AWS RDS: Get instance info
- AWS RDS: Get metrics data
上記アイテムで一括取得した値を「依存アイテム」として、別アイテムに引き継ぎ「保存前処理」機能を使用して必要な値だけを抽出します。
アイテム個々で監視対象にデータ収集するのと比べて、マスターアイテムとして1度に複数の値を取得しているため、監視対象へのアクセス頻度が減り、Zabbixサーバーの負荷を軽減できます。
イメージとしては下図の通りです。


「AWS RDS instance by HTTP」テンプレートでは、依存アイテムに値を引き継ぐ用途のマスターアイテムにDBの容量を圧迫させないため、「保存前処理」機能を使用して取得した値を破棄しています。
そのためZabbixフロントエンドから「最新データ」を確認すると値を取得していないように見えます。
また冒頭でも記載しましたが、テンプレート内にRDSのリソースを監視するJavaScriptが用意されました。
今までは監視対象RDSが多ければ多いほど実行するスクリプトが増加し、プロセス起動負荷がものすごくかかっていましたが、Zabbixサーバープロセスであるpoller内のJavaScriptエンジンで実行されるようになったため、プロセス起動負荷の軽減に繋がっています。
AWSテンプレートの使用方法
ここからはZabbixならびにAWSの設定方法について説明します。
事前に準備するもの
- Zabbix 6.0.13以降の環境
- AWSアカウント
- 監視対象のAmazon RDS
前回の記事でも説明しましたが、Zabbix 6.0.13より前の環境だとJavaScriptエンジンに値をハッシュ化するhmac関数が未実装のため、Zabbix 6.0.13以降の環境を使用する必要があります。
詳しくはこちらを確認ください。
本記事では、インターネット経由でRDS用エンドポイント(rds.<region>.amazonaws.com)とCloudWatch用エンドポイント(monitoring.<region>.amazonaws.com)へアクセスして監視することを想定しています。
そのためインターネットにアクセスできない環境の場合は、事前にVPCエンドポイントを用意する必要があります。
AWSの設定
まずはAWS側の設定をおこないます。RDSメトリクスを収集するために必要なIAMポリシーとIAMユーザーを作成します。
前回の記事でEC2監視用にIAMユーザーを作成している場合は、RDS用IAMロールを既存のIAMユーザーにアタッチすることで監視できますが、アクセスキーを利用する場合は最小限での実装がベストプラクティスとされています。
そのため本記事では、EC2メトリクスを収集できるIAMユーザーとは別にRDSメトリクスを収集できるIAMユーザーを新規作成します。
IAMポリシーの作成
AWSマネジメントコンソールにログインして、「IAM」を押下します。


画面が遷移した後に「ポリシー」を押下します。


「ポリシーを作成」を押下します。


ポリシーの作成画面が表示されるので「JSON」タブを選択します。


JSONコードの入力画面が表示されます。


以下のJSONコードをコピーして、入力画面に貼り付けます。
{
"Version":"2012-10-17",
"Statement":[
{
"Action":[
"cloudwatch:Describe*",
"cloudwatch:Get*",
"cloudwatch:List*",
"rds:Describe*"
],
"Effect":"Allow",
"Resource":"*"
}
]
}
入力画面に貼り付けたら「次のステップ:タグ」を押下します。


タグは必要に応じて設定してください。今回の記事ではタグを追加せず設定を進めます。
「次のステップ:確認」を押下します。


IAMポリシーの名前、説明を入力します。


下にスクロールして「ポリシーの作成」を押下します。


IAMポリシーの作成が成功した場合は、作成したIAMポリシーの名前が表示されます。


IAMユーザーの新規作成
ここからは、IAMユーザーの新規作成手順を説明します。
サイドバーにある「ユーザー」を押下します。


「ユーザーを追加」を押下します。


ユーザー名を記載して、「次へ」を押下します。


アクセス許可の設定画面に遷移するため、「ポリシーを直接アタッチする」を選択します。


先ほど作成したポリシーを選択して「次へ」を押下します。


必要に応じてタグの追加をおこないます。今回の記事ではタグを追加せず「ユーザーの作成」を押下しています。


「ユーザーが正常に作成されました」と表示されていれば、ユーザーの作成は完了です。
次にアクセスキーを作成するため、作成したユーザーを選択します。


「セキュリティ認証情報」タブを選択します。


下にスクロールして「アクセスキーを作成」を押下します。


画面が遷移するので、下にスクロールして「サードパーティーサービス」を選択後、「上記のレコメンデーションを理解し、アクセスキーを作成します。」を選択し「次へ」を押下します。
推奨された代替案として、長期的な認証情報を作成するのではなく一時的なセキュリティ認証情報を使用するように記載されていますが、今回Zabbixは長期的に監視することを想定しているため、長期的な認証情報を作成します。


必要に応じてタグの追加をおこない、「アクセスキーを作成」を押下します。


「アクセスキーが作成されました」と表示されていれば成功です。
「アクセスキー」と「シークレットアクセスキー」は後にZabbixの設定に使用するため、控えておいてください。このページを閉じてしまうと、「シークレットアクセスキー」の確認はできなくなります。


下にスクロールし、「.csvのダウンロード」を選択することでファイルとして保存ができます。
csvファイルの保存ができたら「完了」を押下します。


csvファイルの保存、または「シークレットアクセスキー」を控え忘れた場合は、再度アクセスキーを作成する必要があります。
RDSの確認
監視対象のインスタンスIDとリージョン情報が必要なため確認していきます。AWSマネジメントコンソールにログインして、「RDS」を押下します。


画面が遷移した後、サイドバーの「データベース」を押下します。


監視したいRDSを選択します。


「設定タブ」からDBインスタンスIDをコピーします。DBインスタンスIDは、後にZabbixの設定に使用するため控えておいてください。


次に監視するRDSが起動しているリージョンのコードを確認します。


今回の記事では、東京リージョンにRDSを構築しているため、リージョンコードである「ap-northeast-1」を控えておきます。


Zabbixの設定
続いてZabbixの設定をおこないます。Zabbixの設定では、監視したいAWS RDS用のホスト作成、RDS監視テンプレートを作成したホストにリンク、そしてテンプレートに含まれている設定をおこないます。
今回使用しているZabbixのバージョンは6.4となっています。6.0と6.2とは一部表示内容が異なりますので読み替えて実施してください。
まずホストを作成するため、メインメニューから【データ収集】→【ホスト】の順で押下します。
Zabbix 6.0,6.2をお使いの場合【設定】→【ホスト】の順で押下します。


右上の「ホストの作成」を押下します


ホスト作成画面が表示されるため、以下内容を入力または選択します。
- ホスト名:任意のホスト名を入力
- テンプレート:「AWS RDS instance by HTTP」を選択
- ホストグループ:任意のホストグループを選択
Zabbix 5.0までホストを作成する際は、インターフェース設定は必須項目でしたが、Zabbix 5.2からインターフェースの設定は未設定でもホストが作成できるようになりました。


次にマクロの設定をおこないます。マクロとは指定した文字列(変数名)を指定した値に自動で置き換えてくれる機能です。
テンプレートに登録されているマクロを編集するためには「継承したマクロとホストマクロ」を選択します。


以下のマクロを設定するために、「変更」を選択して本記事内のAWSの設定で控えておいた値を記載します。
- {$AWS.ACCESS.KEY.ID}:作成したAWSユーザーのアクセスキーID
- {$AWS.PROXY}:HTTPプロキシを経由する際にプロキシを指定する ※本記事ではHTTPプロキシを使用していないため空白とする
- {$AWS.RDS.INSTANCE.ID}:監視するRDSのインスタンスID
- {$AWS.REGION}:監視するRDSが起動しているリージョンコード
- {$AWS.SECRET.ACCESS.KEY}:作成したAWSユーザーのシークレットアクセスキー


マクロの値を入力後に、下にスクロールして「追加」を押下する。


ホストが作成されていることを確認する。


【監視データ】→【最新データ】から作成したホストを選択。


最新データを確認して、値を取得できていたら成功です。


一部、値を取得できないアイテムが存在する恐れがあります。その場合は「?」を選択することでアイテムの説明が確認できます。
「?」からRDSテンプレートの監視アイテムを確認すると、クラスター構成でないと取得できないアイテムや、Engineによって取得できないアイテムがありました。
「?」から説明を確認して不必要なアイテムがあれば、ホスト設定からアイテムを無効化することで最新データに表示されなくなるため、無効化することをオススメします。
本記事内のAWS Amazon RDS監視テンプレートの説明で記載した通り、マスターアイテムは値を破棄しているため、最新の値は空白になります。マスターアイテムを無効化してしまうと、依存アイテムの値を取得できないためマスターアイテムは有効にしておいてください。
まとめ
AWSのAmazon RDS監視テンプレート使用方法について紹介しました。
他にもAWSのS3の監視がおこなえる「AWS S3 bucket by HTTP」テンプレートや、AWSのリソースをディスカバリ機能で自動登録してくれる「AWS by HTTP」テンプレートもあります。
AWS以外だと「Azure by HTTP」テンプレート、Zabbix 6.4以降だと「GCP by HTTP」とクラウドの監視テンプレートが追加されています。
今後クラウドサービスの監視テンプレートが多く追加されていくと思います。
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