

z/Linuxに触れてみよう(前半)
こんにちは、システム基盤サービス部の田上です。
z/Linuxは90%以上が一般的なIA Linuxのソースをそのまま利用していると言われています。しかしながらこの解説だけでは、どこまでが同じで何が異なるのか、イメージすることが難しいと思います。そこで、z/Linuxに実際に触れてみることでz/LinuxとIA Linuxとを比べてみていただければと思います。
前回の記事はこちら。
z/Linux環境構築と必要ソフトウェア
今回はみなさんが自社で活用するイメージが持てるように、z/Linuxの稼動環境を一から構築することでその特徴をキャッチアップしていただくことを目的としています。
System zのハードウェア環境を準備せずにPC上でz/Linuxを稼動させることができるように、特別な検証環境を準備してセットアップする手順を解説します。
z/Linux構築環境
ホストOSとなるWindows上でHerculesというSystem zエミュレータを動かし、その上にゲストOSとしてz/Linux(以下、SLESと呼称)を導入します。


必要ソフトウェア
今回使用する環境の詳細を以下に記載します。ユーザーインタフェースや選択肢、設定方法などに違いはあるかもしれませんが、特に記載が無ければ別のバージョンを使用していただいてもかまいません。バージョンが異なる場合は適宜読み替えて参照ください。また、HerculesにつきましてはWindows上でなくても動作します。詳細につきましてはHerculesホームページにて確認してください。
OS
- ゲストOS:
SuSE Linux Enterprize Server 10
URL:http://download.novell.com/Download?buildid=GQMJBjmn_Rk~
[ SLES-10-SP4-DVD-s390x-GM-DVD1.iso ]
※ユーザー登録後Loginする必要があります。
※DVD版を使用します。
- ホストOS:
Windows XP SP3
エミュレータ
Hercules 3.06-1
URL:http://www.hercules-390.eu/
[ hercules-3.07-w32.msi ]
ライブラリ系
- パケットドライバ
WinPcap 4.0
※CTCI-W32は4.0より古いものを推奨しています。
URL:http://www.winpcap.org/install/default.htm
[ 4.0-WinPcap.exe ]
- Herculse用追加ライブラリ
FishLib DLL 2.7.1
[ FishLib-2.7.1.564-bin.zip ]
- WinPcap用追加ライブラリ
CTCI-W32 3.2.1
[ CTCI-W32_3.2.1.160_bin.zip ]
※環境によっては接続できないという事例がよく発生するようすので、その場合はFAQを参照ください。
- Microsoft Visual C++ 2005 SP1 再頒布可能パッケージ (x86)
URL:http://www.microsoft.com/downloads/ja-jp/details.aspx?FamilyID=200b2fd9-ae1a-4a14-984d-389c36f85647&displaylang=ja
※CTCI-W32が使用します。導入済みの場合は無視してください。
- Java Plug-in 1.6.0_20-b02
URL:http://www.java.com/ja/
FTPサーバー
- FileZilla Server 0.9.34
URL:http://filezilla-project.org/
[ FileZilla_Server-0_9_34.exe ]
z/Linux構築手順-ホストOS環境構築と導入メディアの準備
いよいよ構築手順です。ここでは「ホストOS環境構築」と「導入メディアの準備」を説明します。
ホストOS環境構築
1.Herculesの導入
インストーラを実行しインストールしてください。インストール後「マイコンピュータ」を右クリックし「プロパティ」から「詳細設定」のタブを開きます。
「環境変数」から「システム環境変数」へと進み「Path」をダブルクリック。「変数値」にHercules導入先(通常はC:\Program Files\hercules\hercules-3.06\)を追加してください。


※既存の変数値に追加する値は ; で区切って設定してください。
2.WinPcapの導入
インストーラを実行しインストールしてください。
3.FishLib DLL/CTCI-W32の導入
解凍後binディレクトリ内のファイルをすべてHercules導入先へコピーしてください。
4.Java Plug-inの導入
SLES10インストール過程でVNCに接続する際に使用します。VNC Clientというソフトウェアを使用してもかまいません。
5.Microsoft Visual C++ 2005 SP1 再頒布可能パッケージ (x86)の導入
インストーラを実行しインストールしてください。
6.Windowsファイアウォールの設定
WindowsファイアウォールをOFFにしてください。導入作業が終了した後に、元に戻して問題ありません。
導入メディアの準備
Hercules上で稼動するゲストOSが導入メディアから直接読み込むのは『最小限のシステムとして起動するためのファイル』のみです。その他のデータは、コードサーバーと呼ばれるサーバーからネットワーク経由でダウンロードします。
今回はコードサーバーもホストOS上に構築することとします。


1.DVDイメージの読み込み
ダウンロードしたSLES10のディスクイメージをDVDメディアに焼いてDVDドライブで読み込むか、仮想デバイスとしてマウントしてください。ここではDVDドライブを I:\ とします(仮想デバイスについての詳細は省略させていただきます)。
2.FileZilla Serverの導入
インストーラをダブルクリックし、すべてデフォルト設定のまま導入してください。インストールが完了すると右のような画面が表示されます。Always connect to this serverにチェックを入れて「OK」を選択してください。
【注意】PC内のファイルをネットワーク経由で抜き出せる状態になりますので、SUSE導入が完了した後は、アンインストールすることをお勧めします。


3. FTPサーバーの設定1(ユーザー追加)
以下のようなFileZilla Serverの操作画面が表示されるので、「Edit」→「Users」を選択してください。


表示された【Users】の画面で右端の「Add」を選択し、【Add user account】画面で、上段の枠に適当なユーザー名を入力し、「OK」をクリックしてください。
ユーザー追加が完了したら、「Password」にチェックを入れ、パスワードを入力してください。最終的に、下のような画面になっていれば問題ありません。


4.FTPサーバーの設定2(共有フォルダの追加)
上述の【Users】画面。左側の「Page:」内、「Shared folders」を選択し、右側に表示された「Shared folders」内の「Add」を選択してください。【フォルダの参照】画面が表示されますので、導入DVDを読み込んだドライブ(ここでは I:\)を選択し「OK」を選択すると右のような画面になります。
「OK」を選択し、設定を終了します。FileZilla Serverのメイン画面上にエラーメッセージが出力されていないか確認してください。


5.接続テスト
コマンドプロンプトを起動し、以下の1、6、8、10、16行目を入力してください。
C:\Documents and Settings\test>ftp localhost
Connected to test-pc.
220-FileZilla Server version 0.9.34 beta
220-written by Tim Kosse (Tim.Kosse@gmx.de)
220 Please visit http://sourceforge.net/projects/filezilla/
User (home-pc:(none)): ark01 <- 作成したユーザー
331 Password required for ark01
Password:***** <- 登録したパスワード(表示されません)
230 Logged on
ftp> dir <- 内容を表示
200 Port command successful
150 Opening data channel for directory list.
-r--r--r-- 1 ftp ftp 5087457 Jul 06 2006 ARCHIVES.gz <- DVD内のファイル名
-r--r--r-- 1 ftp ftp 17992 Jul 06 2006 COPYING <- DVD内のファイル名
... 省略 ...
ftp> quit
上記のようにDVD内のファイル名がリストアップされれば問題ありません。
z/Linux構築手順-仮想デバイスの作成からHercules導入開始まで
このページでは構築手順のうち「仮想デバイスの作成」、「Hercules用ハードウェア定義ファイルの作成」、「Herculesの起動~導入開始」を説明します。
仮想デバイスの作成
ゲストOSがディスクとして使用するためのファイルを作成します。
コマンドプロンプトを起動し、作成先のディレクトリへ移動。以下のコマンドを実行します。
C:\Documents and Settings\user>G:
G:\>cd hercules
G:\hercules>dasdinit -lfs 1000.3390-9 3390-9 SLES01
作成先のディレクトリには9GB程度の空き容量が必要になります。
上記の例では G:\hercules という場所に仮想ディスクを作成しています。
導入される環境に合わせて変更してください。
Hercules用ハードウェア定義ファイルの作成
上記と同一のディレクトリに sles10.conf という名前のファイルを作成してください。
ファイルには以下の内容を記載してください。18,21行目をホストOSの環境に合わせて変更してください。
#
# Hercules Emulator Control file...
# Description:
# MaxShutdownSecs: 15
#
#
# System parameters
#
ARCHMODE z/Arch
CNSLPORT 3270
CONKPALV (3,1,10)
CODEPAGE default
CPUMODEL 2097
CPUSERIAL 002623
CPUVERID 00
ECPSVM NO
LPARNAME SLES
MAINSIZE 1024 <- ゲストOSに与えるメモリサイズ
# ホストOSのメモリが使用されます。
MOUNTED_TAPE_REINIT DISALLOW
NUMCPU 2 <- ゲストOSに与えるCPU数
OSTAILOR LINUX
PANRATE 50
PGMPRDOS RESTRICTED
SHCMDOPT NODIAG8
SYSEPOCH 1900
TIMERINT 50
TZOFFSET +0900
YROFFSET 0
HERCPRIO 0
TODPRIO -20
DEVPRIO 8
CPUPRIO 15
# DASD Devices
1000 3390 1000.3390-9
#1001 3390 1001.3390-9
#1002 3390 1002.3390-9
#
## CTC Adapters
#
0F00-0F01 CTCI aaa.bbb.ccc.100(※1) aaa.bbb.ccc.2(※2)
#
# ※1 ゲストOSに割り振るIPアドレス
# ※2 ホストOSのIPアドレス(実際に使用しているIPアドレスにしてください)
Herculesの起動~導入開始
Herculesのインストールによって作成される「Hercules Command Prompt」を実行するとコマンドプロンプトが実行されます。
先ほど仮想デバイスを作成したディレクトリに移動し、以下のコマンドを実行するとHerculesが起動します。
G:\hercules>hercules –f sles10.conf


上がHercules起動時の画面です。
この状態で以下のコマンドを実行するとインストールが開始します。
i:¥はDVDを読み込んでいるドライブ名に変更してください。
ipl i:¥suse.ins
まとめ
今回は「z/Linuxに触れてみよう(前半)」として、まずはWindows上にz/Linuxの稼働環境を準備する手順を紹介させていただきました。
次回は、本題となるz/Linuxの導入手順を紹介いたします。